耳の病気
突発性難聴(急に耳がきこえなくなったら?)
朝、起きたら突然、耳がボーとして聴こえが悪くなった様な気がする。耳が何か詰まった様な感じがする。耳が飛行機に乗っているような変な感じがする。この様な症状で、突然発症するのが突発性難聴の典型的なパターンです。発症は聴力が低下した瞬間を確実に自覚できるほど即時的(突発的)である(たとえば、ある朝起きたら片耳が聞こえにくくなっていた、など)。突発的な発症が特徴であり、「何時からかははっきりしないが、徐々に聞こえなくなった」ような難聴は突発性難聴ではない可能性が高いと思われます。
突発性難聴は、文字通り、突然難聴が発症する病気で、はっきりした原因は不明ですが、「内耳への循環障害」、「ウイルス感染」の可能性があると言われています。
突発性難聴は、難聴、耳鳴、めまいの3つの症状が認められますが、めまい症状は必ず伴うとは限りません。軽症型の場合には、難聴と言うより、何となく耳に違和感がある、耳が詰まった感じがする、という程度の症状の方が多いようです。
飛行機に乗った時や、山で、耳がこもった感じがする時があると思いますが、軽症の突発性難聴も同じように感じることが多いようです。しかし、その原因は、前者が耳と鼻をつなぐ耳管の調節機能の障害であるのに対して、突発性難聴では内耳の神経障害であるため、その治療方針は全く異なります。しかも、突発性難聴では、早期に治療を開始しないと、聴力の回復が不良となる可能性が高くなると言われています。
突発性難聴の治療は、軽症の場合は、神経の修復に必要なビタミン剤と耳への血流を改善する薬の投与を中心に行われますが、中等症や、軽症でも治りが悪い方の場合にはステロイドホルモン剤の投与が考えられます。また耳が全く聴こえなくなるような重症の方の場合には、入院での点滴加療も考えなければなりません。
耳の違和感がある、耳の詰まった感じがする、聴こえが悪い等の症状を自覚された場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診して聴力検査を行い、必要な治療を受けるようにして下さい。また、治りが悪かったり、再発を繰返すようであれば、メニエール病の可能性も考えられますし、極めて稀な疾患ではあるものの聴神経腫瘍の可能性を考えてMRI検査を受けることが望ましい場合もあります。その他、外リンパ瘻、内耳梅毒、前下小脳梗塞、ムンプス性内耳障害、音響外傷など必要に応じて鑑別する必要がありますので早期受診をお勧めします。
めまい(耳が原因の場合も結構多いといわれています。)
めまいの原因として、内耳が関与する例が少なくありません。内耳は、聴覚に関係する「蝸牛」と、体のバランスに関係する「前庭」の2つの機能を持っているため、内耳への血流障害、ウイルス感染等により難聴やめまいの症状が引き起こされることになります。良性発作性頭位めまい症、前底神経炎、急性中耳炎あるいは真珠腫性中耳炎の内耳への波及による内耳炎や瘻孔症状、めまいを伴う突発性難聴やメニエール病など、様々な内耳性めまいを生じる可能性のある疾患があります。
内耳性めまいの特徴としては、回転性のめまい(周囲の景色が回転して見える、あるいは自分自身が回転しているように感じる)が多く、眼振といわれる特徴的な眼の動きを認め、耳鳴や難聴等の蝸牛神経症状を伴う例が多いことが挙げられます。嘔吐症状を認めることはあり得ますが、原則として、意識障害や他の脳神経症状を伴うことはありません。幼小児では、めまい症状をうまく表現することができず、怖がって立とうとしない、あるいは周囲の者にしがみついて離れない等の症状として出現してくることがあります。
耳鼻科的な検査として、フレンツェル眼鏡下の眼振の観察(多くは水平回旋混合性眼振)、聴力検査、聴器単純X線検査、電気眼振計検査などを行い、原因を特定することになります。
内耳性めまいの場合、頭位変換で症状が増悪することが多く、めまいの急性期には、まず第一に安静を保つことが重要となります。経口摂取が困難となるため、点滴で水分を補給すると共に、めまいを押さえる薬の点滴および内服で症状が改善するのを待ち、その上で、聴力検査やCT等の、めまいの原因疾患の鑑別に必要な検査を行い、それぞれの原因疾患に応じた治療を行うことになります。